受注活動を行い、見積対応などを経て晴れて受注確定すると、次はイベント対応になります。
「イベント」と言いますと、なにかセレモニー的な行事があるのかなと思うのですが、そうではありません。
自動車を量産するためのプロセスが「イベント」で、必ずどのカーメーカーも行いますから避けて通れない重要なものです。
では、そのイベントとはどういうものなのか、部品メーカーはどういった対応を行わなければならないのかなどお伝えしたいと思います。
自動車業界のイベントとは?
自動車業界の「イベント」とは、新規車種を量産する前に車両や部品に問題が無いか、などを確認していくステップの事をさします。
これはすべての自動車メーカーで行われており、踏むステップの回数や名前は違いますが絶対にあります。
各イベント毎に自動車メーカーで行われる役割は違いますが、部品メーカーとしては暫定型暫定工程品か本型暫定工程品か本型本工程品かで対応方法が異なります。
このように金型と工程が量産で使用するものかどうかという点で判断します。
後ほどお伝えしますが、車両の量産が近い時期になるにつれて、暫定型暫定工程→本型暫定工程→本型本工程となっていきます。
暫定型暫定工程イベント
暫定型暫定工程イベントは主に「試作」と言われるようなものにあたります。
言い方を選ばないでお伝えすると、「形になってSPECを満足していれば作り方はなんでもいい」と言うことなのです。
「暫定」とは解釈がいろいろとできる言葉で、「一時的なもの」としてとらえることがほぼほぼです。
ですので、この試作の場合は試作型を使用して試作工程などで製造することが多いです。
また、このイベントの場合はまだ部品メーカーの決定がされていない場合もあります。
本型となりますと、カーメーカーはメーカーを決めて金型費を支払う対応を進めなければなりません。
ですので、まだ部品メーカーが決まっておらず、メーカー選定の段階で車両評価のみ行うようなイベントの時に暫定型暫定工程品は使用されますよ。
本型暫定工程イベント
本型暫定工程イベントは車両の量産前の準備段階になります。
メーカー決定が済んでいる
このころにはメーカー決定が終わり、部品メーカーもほぼすべて決まっています。
本型暫定工程のイベントに乗れば、安心します
量産で使用する金型を製造しなければならず、そのためにはカーメーカーも部品メーカーもサプライヤーを絞って金型を作ってもらわないと余計なコストがかかります。
例えば、本型暫定工程品でメーカーが決まっておらず、例えば2社のどちらにするかが決定していないとします。
金型費が500万円かかるとしたら、メーカー決定していれば1社のみに500万円支払って本型暫定工程品を製造してもらえば良いですが、2社にやってもらうなら500万円×2=1,000万円支払わなければなりません。
それに、そのうち1社に決めるため、もう1社の金型は不要になるため500万円は無駄になってしまいます。
こういった事にならないためにも本型暫定工程イベントにはメーカー決定がされているケースがほとんどですよ。
工程は量産前提でなくても大丈夫
メーカーによってきつく言われることもあるかもしれませんが、一般論としては暫定工程なので量産で生産する工程でなくても大丈夫です。
これはリードタイムという点でも助かることで、本型暫定工程イベントでは製品の仕様が固まっていないケースもあり、設計変更になる事が多いです。
そのため、金型と製品製造のリードタイムを考慮していれば良いので少しは柔軟に対応ができます。
例えばですが、金型が3ヶ月、量産工程は6ヶ月というリードタイムが必要なので、量産工程を整備する事の方が時間が基本的には時間がかかります。
ですので、あくまで暫定工程という点で設計変更などが入ることが多いので対応に追われることもあります。
本型本工程イベント
本型本工程イベントは金型はもちろんですが、製造工程も量産で使用する工程で製造する必要があります。
そのため、すでにラインの構築や必要な治工具類や設備投資も完了していなければなりません。
リードタイム
本型本工程はラインを構築するため、リードタイムが大きく掛かります。
安定して効率的に量産するためにはラインの構築には時間が必要です。
1例ですが、量産ラインを整備するための必要項目と時間が下記になります。
- 治工具類の完成:約2ヶ月
- 設備完成:約5ヶ月
- 工程検証:約1ヶ月
- 品質書類の準備:約1ヶ月
この例では約7か月のリードタイムがかかります。
設備完成が一番リードタイムがかかるので、治工具類はその間に完成すると考えて、工程検証と品質書類の準備はこの順序でやらなければならなりません。
品質書類の準備
本型本工程イベントでは、量産工程で製造するための品質書類を整備する必要があります。
PPAP(Production Parts Approval Process)と呼ばれます。
- 初品検査成績書
- QC工程表
- FMEA
- 検査法
- などなど
PPAPのレベルによって必要書類が変わります。
これ以上に書類が必要な場合もありますし、不要な場合もあります。
それはお客様からの要求レベルによりますのでケースバイケースです。
工程監査
新規工程で量産する場合、お客様からの監査を受ける場合があります。
お客様がPPAP書類を見ながら工程を見て問題が無いかを確認されます。
きちんとプロセスを踏んで工程を作りこんでいるとそこまで強い指摘はないです。
ですが、軽微な指摘で済まない場合は指摘事項の改善に取り組む必要があります。
カーメーカーごとのイベント名称
カーメーカーごとにイベントの名称が異なります。
代表的なところをお伝えいたしますね。
トヨタ
イベント名 | 素性 |
---|---|
CV | 本型暫定工程 |
1A | 本型本工程 |
量確 | 本型本工程 |
品確 | 本型本工程 |
LO(LINE OFF) | 量産開始 |
ホンダ
イベント名 | 素性 |
---|---|
段0 | 本型暫定工程 |
段確 | 本型本工程 |
品確 | 本型本工程 |
量確 | 本型本工程 |
MP(MASS PRODUCTION) | 量産開始 |
まとめ
自動車業界のイベントについてお伝えいたしました。
本型暫定工程と本型本工程のイベントがあり、それぞれ役割が違うのですが部品メーカーにとっては求められる素性で納品するための対応を行うことになります。
受注確定したのちにイベント対応をすることになるので、受注確定後の業務として避けて通れないところですね。
イベント対応が完了すればいよいよ量産スタートになります。
量産になれば、また違う業務が待っていますので別の記事でお伝えしていきますね。
受注活動からイベント対応までなどについても詳しくお伝えしていますので、これらの記事も合わせてご覧ください。
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