自動車業界の会社の求人票の中に「受注活動」と書かれていますが、それって自動車業界だとどういう活動かイメージするのも難しいですよね。
正直なところ、営業活動としイメージされるものとは少し違うものかもしれません。
自動車業界の仕事を知るうえで、受注活動は非常に大事な部分です。
売上を増やすためにも、製品を売らなければなりません。
しかも自動車業界の特に部品メーカーは量産になって初めて売上が出るので受注活動から即売上になるわけではありません。
と、前置きが長くなりましたが自動車業界の受注活動とはどういったものなのか、どれくらいの期間行うもなのかなどを具体的にお伝えしていきたいと思います。
受注活動のターゲット車両
自動車業界の仕事内容として受注活動がありますが、それは何をターゲットにしているのかをお伝えします。
当たり前ですが、部品を車に搭載させることです。
ですが、車と言ってもどうやって搭載するのかを具体的にお伝えしていきたいと思います。
開発中の車両
基本的には、自動車業界の受注活動のターゲットの大半が開発中の車両がターゲットになります。
この図で言いますと、車種Aが量産後に車種Aのフルモデルチェンジの開発がすでにされています。
カーメーカーでモデルチェンジの具体的な案が固まり、車両設計や要求スペックが固まってきた段階で部品メーカーに話が出てきます。それが2年~3年目くらいのイメージです。
1車種で1回決まれば数年量産されるので1回採用されるとでかいです。
逆に1回逃がすと次が数年後なので、1車種の受注活動は大事になるわけです。
ですが、カーメーカーも1車種だけ量産しているわけではないので、複数の車両に対して同じように開発中の車両のアプローチをしていきます。
トヨタだけでもカローラ、ヤリス、プリウス、RAV4、ハリアーなどいろいろありますね
現在量産中の車両は?
現在量産中の車両に搭載されるように狙わないのかと言われると現在量産中の車両はほぼ狙いません。
100%狙わないかというと嘘になりますが、狙っても採用可能性が極端に低いからです。
自動車業界では、新規車種に採用されるまでにたくさんのプロセスがあり、開発中の車両で売り込んでいる部品の評価などを経て問題ないことを確認したのちに量産されます。
そのプロセスが簡単にクリアなく、新規採用になるためには途方もないプロセスを踏む事になります。
なので、よっぽどお客様にとっても魅力があり、実現性の高い案件でない限りは今の量産中の車への採用活動は行わないです。
受注活動のターゲット顧客と具体的な活動
受注活動のターゲット顧客は大きく分けると以下になります。
顧客 | ターゲット |
---|---|
既存顧客 | 既存部品の既存用途での引き合い |
既存顧客 | 既存・新規部品の新規用途での引き合い |
新規顧客 | 新規用途・既存用途どちらでも |
既存顧客はいわゆるルート営業になります。
新規顧客は全く新しい会社への売り込みになります。
もう少し具体的にお話していきますね。
既存顧客の既存用途での引き合い
この既存顧客へ既存用途での受注活動がほとんどと言っていいと思います。
例えば、ハンドルメーカーの場合、いつもお取引をしているA社から、新車種に既存部品の形状違い品が必要になるためお願いしたいと依頼があるケースです。
ここで一つ大事なポイントがあります。
ここで競合他社とコンペになります。
競合他社と客先の要望事項(製品設計・機能・コスト)にマッチできるかを競い、最終的にはコスト勝負になります。
まずは設計要件を満たせられるか、その次にコストが安いところに発注がかかるというイメージですね。
当案件の受注活動は数は多いですが、競合が強い会社だといつもコストでツライ戦いになります。
競合がいる場合は要求事項の対応可否→コスト勝負となります
自社にしかできない技術があれば強い!
自動車業界ではそのメーカーでしかできない技術があれば強いです。
先ほどお伝えしましたが、競合もいる製品であれば正直コスト勝負になるので、コスト競争力がある会社が強いです。
逆に、自社でしかできない技術を持っている場合は、競合がいないのでブルーオーシャンになります。
もちろんコストは下げろと言われますが、他社品と相当差がないと失注になることは皆無です。
技術力がモノを言うので、会社があぐらをかかずに努力を続けていれば非常に良い商売ができますよ。
既存顧客へ新規用途
既存顧客へ新規用途として営業活動をすることもあります。
例えば、エンジンに使っていただいている部品の技術をバッテリーにも使えないかアプローチするなどです。
この場合、既存顧客はいろんなアプリケーションをしているメーカーになるので、カーメーカーやいろんなアプリケーションを取り扱っている部品メーカーになりますね。
ぽつぽつとお声がけはいただくのですが、それをものにできるかはメーカーの技術力や対応力になってきます。
対応力は外からだと見えない部分ですので、会社の風土的に新しいものをドンドンやろうという会社か、既存用途以外には難色を示す会社かで対応が分かれてきますね。
既存顧客だと参入障壁が少し下がる
新しい会社とは取引をすること自体が難しいので、すでに取引のある会社へはアプローチのしやすさが全然違います。
どこの馬の骨ともわからない会社とすでに取引している会社、どっちの方が安心するかというと断然後者です。
なので新規用途として受注活動をするときには既存取引先の別部門にアプローチをすることが多いですよ。
新規顧客へ既存・新規用途
あまりありませんが、新規のお客様に対して既存用途だったり新規用途としてアプローチを行うこともあります。
例えばですが、既存のエンジン部品についてA社に納品しているところ、まだ取引の無いB社からお声がけをいただくなどです。最近ありました。
他にも、お客様の求めている要求に対してマッチするものを提案して取引になるケースなどもあります。
こういった場合は、価格競争というかは自社製品が使えるのかどうかというアプローチになることが多いです。
最近あったケースでは、お客様の要求に対してマッチしている提案やスペックを満足できたので新用途として採用が決まったという事もあります。
新規顧客の要望を満たして形にできるような受注活動はそこまで多くはありませんが、達成できるとひとしおです。
受注活動の期間
受注活動の期間は様々ですが、短いものだと1~2ヶ月、長いと1~2年かかります。
- 既存顧客から既存製品の新車種の引き合い:~数か月
- 既存顧客からの新規用途:数か月~1・2年
- 新規顧客からの引き合い:1~2年
1案件でこれくらいの期間がかかります。
新規性が高くなるにつれて超えなければならないハードルも高くなってきます。
それにつれて時間もたくさんかかってしまうので受注活動の期間は長くなりますよ。
もちろん、1案件だけを動かすわけではなく、受注活動は複数の案件を持ちながら対応していきますのでそれぞれの案件で進捗度合いもバラバラになります。
1案件が長期化するのですが、それが自動車業界の受注活動の特徴です
これによって結果が出るのが遅く、PDCAを回して製品や会社の取り組みを改善していくことにスピード感を持つことが難しいです。
ですが、変化をしている会社やチャレンジできている会社は一歩先を行くので、新しい製品にチャレンジしている会社を選ぶと良いですね。
まとめ
自動車業界の受注活動についてお伝えしました。
- 開発中の車両への受注活動が主
- 既存顧客からの既存用途での引き合いがほとんど
- 新規用途・新規顧客などはまれ
- 1つの案件が完結するまで数か月~1・2年かかる
次は、受注活動でも非常に大事なコストについてお伝えしていきます。
→#2 自動車業界の見積方法や交渉について具体的に解説!RFQ・定期改定・コストダウン
ものが良くても値段が高過ぎると売れませんので。
では、また良ければご覧ください!